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遺言書は「早すぎる」ということはありません。40代・50代が今、自筆証書遺言書保管制度を知っておきたい理由

「遺言書は70代からでいい」というイメージは、もう実態と合わなくなってきました。40代・50代のうちに準備を始める方が、じわじわ増えているのです。子どもがまだ小さい家庭、離婚や再婚を経験した家庭、事業や不動産を持つ家庭。遺言書を用意しておいたほうが安心な事情は、珍しくありません。そして、遺言書は、書けば書き直せます。「一度書いたら二度と変えられない」というものではありません。40代・50代で書いても、状況が変われば、あとから作り直せばよいのです。むしろ、元気な今のうちに一度書いてみることが、家族への安心材料のひとつになります。

遺言書は、大きく分けて2つあります。ひとつは、自分の手で紙とペンで書く「自筆証書遺言」。もうひとつは、公証役場で公証人が作成する「公正証書遺言」です。公正証書遺言は、法律の専門家が関わるため様式の不備がなく、確実性が高いのが特徴です。ただし、財産額に応じた手数料がかかり、公証役場に足を運ぶ必要があります。一方、自筆証書遺言は、費用がほとんどかからず自宅で書けるという手軽さがあります。相続法の改正で、2019年から財産目録の部分は、パソコンで作って印刷したものを添付することも認められるようになりました。書きやすさは、大きく前に進みました。

ただし、弱点もあります。自筆証書遺言は、自宅で保管していた場合、紛失や改ざん、あるいは相続人が見つけられないといったリスクがつきまといました。この弱点を埋めるために、2020年7月10日から始まったのが「自筆証書遺言書保管制度」です。全国の法務局(遺言書保管所)が、自筆証書遺言を安全に保管してくれる仕組みで、費用は1通あたり3,900円。公証役場より安く、しかも様式のチェックも受けられます。遺言者本人が法務局へ出向く必要がある点だけは、注意が必要です(法務省「自筆証書遺言書保管制度について」)。

とくに40代・50代で意識しておきたいのは、遺言書が「相続をもめさせないための保険」になるという点です。近年、相続トラブルは、資産の多い家庭で起こるとは限りません。むしろ、遺産が5,000万円以下の、いわゆる普通の家庭でこそ相続争いが起きやすいと言われています。家族関係が良好でも、いざ相続の場面になると、価値観や過去の思いが表面化することは珍しくありません。遺言書は、そうした場面で「亡くなった本人の意思」として、家族の判断を支える1枚になります。

何を書けばよいのでしょうか。まずは、財産の棚卸しから始めましょう。銀行の預金、証券口座、不動産、生命保険、そして負債。ひととおりリストにしてみると、思わぬ見落としに気づくこともあります。次に、それぞれを「誰に、どのように残したいか」を、書き出してみてください。子どもへの分け方、配偶者への配慮、事情のある兄弟への手当て。答えが出にくいところこそ、遺言書に書き残しておくと役立ちます。「付言事項」として、家族への思いや、その分け方を選んだ理由も書き添えられます。この一言が、遺された家族の理解につながることが少なくありません。

40代・50代で遺言書を書くことは、家族のための現実的な準備です。「まだ早い」と後回しにしているうちに、認知機能の低下や、突然の病気で書けなくなるケースもあります。夏の夜、少し時間ができたときに、財産目録を一枚書き出してみる。それだけで、下書きは始められます。書き上げた遺言書を家族に見せる必要は、ありません。ただ、「もしものときは、法務局にあずけてある」と伝えておく。それだけで、家族の負担を減らすことにつながります。書き終えた紙が1枚あるだけで、遺されたご家族の心の重みは、驚くほど軽くなるものです。